― 空き家の予防と支援策について学ぶ ―
NPO法人 出雲市空き家相談センターが主催する「空き家対策シンポジウム」がビッグハート出雲で開催され、聴講しました。講師は東洋大学理工学部建築学科教授の野澤千絵氏で「人口は減っても持続可能な街にするには~これ以上、空き家を増やさないために私たちができること~」と題した講演が行われました。
最新の全国の空き家率は13.6%と5年前と比べると横ばいとなっていますが、住宅総数も増加しており、実質的に空き家の総数は増加し続けています。2015年に「空家対策の推進に関する特別措置法」が施行され、市町村による空き家対策の本格化が図られたものの、所有者が地元にいない、相続未登記が続き、所有者多数で身動きが取れないといった「問題先送り空き家」という厄介な存在があり、対策は一部に限られている現状が報告されました。そして、空き家になる前の予防策が重要であり、相続が発生する前の段階から所有者やその相続者が住まいを円滑に「責任ある所有者・利用者」へと引き継ぐための活動、住まいの「終活」の推進が必要であると説明されました。そのため、相談窓口・体制の強化や街の多機能化に向けた各種規制の見直し、支援策の強化とともに住宅総量の増大を伴う居住地拡大の抑制が最も重要であると指摘されました。そして、出雲市の都市計画マスタープランの問題点について、空き家対策が喫緊の課題となっているにもかかわらず見直しされていないこと、非線引き区域であることにより住宅地が無秩序に拡大していることに懸念を示されました。人口減少が現実となっている現代社会において、住宅総量と居住地面積をこれ以上無秩序に増やさない取り組みや既にある住宅・居住地の再生や更新を中心とした政策により、多機能で持続的な都市を構築していくことが望まれます。
続いて、野澤千絵氏をはじめ、木村竜生氏(NPO法人出雲市空き家相談センター副理事長)、藤田貴子氏(NPO法人てごねっと石見理事長)の3氏により座談会が開催されました。出雲市空き家相談センターの取り組みとして、司法書士や不動産業者、税理士、弁護士、行政機関などと連携して昨年から開始している情報提供、解決先へのマッチング、専門家による助言・支援をワンストップ相談する取り組み、てごねっと石見からは、空き家を活用して、若い移住者に定住促進を図る事業などが紹介されました。全国各地で実践されている取り組みを参考にしながら、出雲のそれぞれの地域で現状に見合った支援策を模索していく必要がありそうです。